登録販売者試験に合格した後は、ドラックストアなどの働き先で販売従事登録を済ませて店頭で登録販売者としての業務を始めます。
しかし白衣を着て店頭にたったとしても、まだ1人で薬を販売することは許されません。
なぜなら、この段階ではまだ研修中の登録販売者だからです。
研修中の登録販売者は、薬剤師や先輩の登録販売者の指導の元で、決められた業務の経験を積まなくてなりません。
登録販売者として、1人で一般用医薬品の第2類医薬品や第3類医薬品を販売できるようになるためには、直近の5年以内に2年以上1,920時間以上の実務・業務経験を積み「管理者要件を満たした登録販売者」になる必要があります。
管理者要件を満たした登録販売者は、条件を満たしていない登録販売者よりも、就職や給与面でもとても有利になります。
今回の記事では以下の内容について解説します。
- 実務経験と業務経験の違い。
- 管理者要件を満たすための1920時間のカウント方法は?
- 管理者要件を満たした登録販売者にできること。
みなさんがイメージする登録販売者とは、管理者要件を満たした登録販売者の事だと思いますが。
管理者要件を満たすための条件を正しく理解しないと、いつまでたっても1人で薬を販売できないという場合もあります。
皆さんは、この記事を読んで最短で管理者要件を満たす登録販売者になれるようにしましょう。
管理者要件を満たした登録販売者とは
登録販売者試験に合格しただけではまだ登録販売者ではありません。
登録販売者試験に合格し、勤務先の企業で販売従事登録を行って初めて登録販売者となります。
販売従事登録を行ったばかりの登録販売者は、まだ1人で薬を販売できない「研修中の登録販売者」の状態です。
研修中の登録販売者は実務・業務経験を積む事で、店舗の管理者になることや1人で第2・第3類医薬品を販売する事ができる「登録販売者」になります。
薬機法ではこの『店舗の管理者になることができ、1人で薬を販売できる登録販売者』を「登録販売者」としか表現していません。
このブログでは「研修中の登録販売者」と区別するため、実務・業務経験を積んで店舗の管理者になることができ、1人で薬を販売できる登録販売者を=「管理者要件を満たした登録販売者」と表現します。

ネット上には一般の人にもわかりやすくするために。
「管理者要件を満たした登録販売者」=「正規の登録販売者」
とい表現しているサイトもありますが。
- 実際の現場や行政ではそのような表現されていない。
- 「正規の」と表現してしまうと、それ以外の登録販売者は「非正規の登録販売者」となり実態とそぐわない。
以上のような理由から、このブログでは実務・業務経験経験を積んだ登録販売者を「管理者要件を満たした登録販売者」と表現します。
管理者要件を満たす条件:実務・業務経験をどれぐらい積めば良いの?

実務・業務経験ってなんですか?
実務・業務経験とは、ドラックストアなどで薬剤師や先輩の登録販売者の指導の元に働いた経験です。
それぞれの違いは以下のようになっています。
- 実務経験:登録販売者となる前(一般従事者)として働いた経験。
- 業務経験:登録販売者となった後に働いた経験。

管理者要件を満たすにはどのぐらい経験を積むのですか?
令和4年の手引改正以降、管理者要件を満たすための実務・業務経験は以下の通りです。
直近の5年以内に実務・業務経験が2年以上あり、そのトータル時間が1,920時間を超えていること。
つまり、直近の5年以内の実務経験と業務経験を合わせて働いていた期間が2年以上あり、その合計時間が1,920時間を超えていれば、管理者要件を満たした登録販売者となることができます。
これから管理者要件を満たそうと考えている人は、この5年以内2年以上1,920時間を覚えておけば大丈夫です
手引の記述をわかりやすく説明
これから登録販売者試験を受けようとする人にとっては、先の条件だけでは試験問題として出題されたときに知識として不十分かもしれません。
なぜなら、手引の記述はもう少しわかりにくい記述になっているからです。
ここでは試験問題として出題されても良いように、手引の記述内容をわかりやすく説明します。
管理者になれる登録販売者の条件:手引の記述はチョットわかりにくい
手引では管理者になることができる登録販売者の条件を以下のように記述しています。
この登録販売者は、薬局・店舗販売業又は配置販売業において、過去5年間のうち
①一般従事者として薬剤師又は登録販売者の管理及び指導の下に実務に従事した期間。
②登録販売者として業務に従事した期間。
が通算して2年以上( 従事期間が月単位で計算して、1か月に80時間以上従事した月が24ヶ月以上、又は、従事期間が通算して2年以上あり、かつ、過去5年間において合計1,920時間以上) あることが必要である。
①と②は実務経験と業務経験の違いを説明しています。
実務・と業務の違いは先に説明しました、言葉の違いはありますが「働いた期間」ぐらいの理解で良いです。
その後の管理者になれる期間・時間の記述内容を平たくいえば。
「ドラックストアなどで、薬剤師や先輩登録販売者に教えてもらえる状態で2年以上働いていること。」
となります。
しかし、この記述では『2年以上』という部分をどうカウントするかで問題が発生してしまいす。
例えば、月に1回1時間の勤務形態で2年間働いた場合、通算で24時間しか業務経験が無くても店舗管理者になれてしまいます。
さすがに24時間の業務経験では、2年間働いたとしても店舗の管理責任者になれるだけの業務経験が得られるとは考えられません。
1ヶ月とは80時間以上従事した月とする
そこで青文字で書いた条件が付けられていました。
「従事期間が月単位で計算して、1か月に80時間以上従事した月が24ヶ月以上」
つまり、1ヶ月に80時間以上働いた月が24回あった場合、2年分の業務経験が得られた事として管理者要件を満たす事ができるということです。
ここでまた問題が発生します。
今度は1ヶ月に80時間以上働かないと管理者要件を満たすための経験としてカウントされないという事です。
例えば、パート・アルバイトの登録販売者が1日4時間・週4回勤務のような勤務形態では、何年働いても業務経験は0カウントのままです。
極端にいうと毎月78時働いていたとしても、業務経験としては0カウントになってしまいます。
これでは正社員のように毎日8時間勤務の登録販売者以外は、管理者要件を満たすことができなくなってしまいます。
2年以上・5年以内で通算1,920時間以上
そこで令和4年の手引改正から、緑文字の部分が追加されました。
「従事期間が通算して2年以上あり、かつ、過去5年間において合計1,920時間以上」
この場合、80時間の月だけをカウントするという縛りがなくなるので、パート・アルバイトのような登録販売者でも時間さえかければ管理者要件を満たす事ができます。
先の例の1日4時間・週4回勤務のような勤務形態でも、約2年4ヶ月で管理者要件を満たすことができます。
また、途中で休職や時短勤務の期間などがあっても、5年以内に1,920時間以上の業務経験があれば管理者要件を満たせるようになりました。

単純に1,920時間以上だけで良いのでは?
1,920時間の条件だけだと、正社員で8時間勤務の登録販売者なら1年未満で管理者要件を満たしてしまいます。
いくら1,920時間働いていたとしても、一年未満しか業務経験がない状態では店舗管理者になれるほどの経験が得られるとは考られません。

長時間残業のブラック店舗なら、すぐに管理者になれてしまいますものね。
私の勤務する会社では、毎年新入社員の全員が秋の登録販売者試験を受験します。
合格者は入社2年目の4月に一斉に管理者要件を満たし、登録販売者手当が2万円支給されるようになります。

よく考えたら、手引の青文字の部分の記述は必要無いのでは?
確かに、令和4年の手引改正で緑文字の部分が追加された時点で、青文字の部分が削除されていればこのような説明はいらないはずです。
しかし、登録販売者試験は手引が全てです。
もし「1ヶ月の実務・業務経験は何時間か?」のような問題が出題された場合でも正しく回答できるようにしておきましょう。
管理者要件を満たした登録販売者にできること
ここまでどうしたら管理者要件を満たせるのかを説明してきました。
では、管理者要件を満たすと何ができるようになるか解説します。
管理者要件を満たした登録販売者は1人で薬を販売できる
登録販売者に合格して販売従事登録を行った登録販売者は研修中の登録販売者となりますが、まだ1人で薬を販売することはできません。
研修中の登録販売者は、薬剤師や先輩の登録販売者の指導を受けながら業務経験を積む事で管理者要件を満たして初めて1人で薬を販売できるよになります。
第2類・第3類医薬品を取り扱う店舗の管理者になれる
小売業の店舗などで医薬品を取り扱うには、管理者要件を満たした登録販売者を管理者として置かなくてはなりません。
登録販売者は管理者要件を満たすと、その店舗の責任者になることができます。
その店舗の責任者になるわけですから、仕事のやりがいはもちろん、収入面でもベースアップが期待できます。
ちなみに第1類医薬品を取り扱う店舗の管理者になるには、第2類・第3類医薬品をあつかう管理者よりも業務経験が必要になります。
その場合は便宜上「第1類医薬品をあつかえる管理者」と呼ばれる事が多いです。
管理者要件を満たすと求人・給与がなどの条件が大幅アップ
企業側は1人で薬を販売できる、できれば店舗管理者までできる人材を望んでいます。
店舗管理者となって仕事を任せられるような人材や、24時間営業の深夜帯に1人で薬を販売できる人材は高時給で求人が出されています。
逆に管理者要件を満たしていない登録販売者は、即戦力とならないため求人少ない傾向にあります。
また、登録販売者として雇用されても研修中の登録販売者では手当などの面で管理者要件を満たした登録販売者より低く設定されていたり、中には普通のパート・アルバイトと同じ時給の企業もあります。
このような理由から、登録販売者試験に合格した後は業務経験を積み、なるべく早く管理者要件を満たした登録販売者になる事が重要です。
管理者要件を満たして登録販売としてのキャリアUPをめざす
この記事では管理者要件満たした登録販売者になる条件を説明しました。
勉強をして登録販売者を目指すという事は、登録販売者にしかないメリットを得たいという事だと思います。
一般的に考えられる登録販売者のメリットは管理者要件を満たしてから得られるようになります。
ですから、登録販売者試験に合格した人は業務経験を積んで少しでも早く管理者要件を満たせるようになりましょう。
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